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EG Synchro FXサポートです。
今週(先週)のレビュー
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0737で寄り付いた後、以下が支援材料となり、週明け早々に、週間高値1.0788まで上昇しました。
- レーンECB理事による「7月・9月の25bp利上げが基準ペース」とのタカ派的な発言
- ドイツ5月消費者物価指数(結果7.9%、予想7.6%、前回7.4%)の市場予想を上回る結果
- 上記を背景とした欧州債利回りの急上昇(ECBによるタカ派傾斜観測→ユーロ買い)
- ユーロ圏5月経済信頼感指数(結果105.0、予想104.9)の良好な結果
- 中国上海市によるロックダウン解除のポジティブサプライズ
(中国上海市は2ヵ月間に亘って続けたロックダウンを6/1に解除→中国経済を巡る過度な悲観論後退→市場心理改善→欧州株上昇)
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、下記などが重石となり、週央にかけて、週間安値1.0626(5/23以来の安値圏)まで急落しました。
- ユーロ圏5月消費者物価指数(結果8.1%、予想7.8%)の伸び率加速(過去最高水準を更新)
- 上記を背景とした欧州経済のスタグフレーション懸念
(これまで見られていた「インフレ加速→ECBによるタカ派傾斜観測→ユーロ買い」といったシンプルな波及経路から、「インフレ加速→スタグフレーション懸念→欧州経済の先行き懸念→ユーロ売り」の波及経路にシフト) - 米経済を巡る過度な悲観論後退(米5月ISM製造業景況指数の力強い結果)
- 米当局者によるタカ派的な発言(ウォーラーFRB理事、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、セントルイス連銀ブラード総裁など)
- 米金利上昇に伴うドル買い圧力
- 欧州最大の資産運用会社アムンディのビンセント・モルティエ最高投資責任者による「テクニカル的にもファンダメンタルズ的にもユーロは恐らくドルと等価になるだろう」との弱気発言
もっとも、一目均衡表転換線をバックに下げ渋ると、ECBによる金融引き締め観測の高まり(ドイツ10年債利回りが2014年7月以来、約8年ぶり高水準となる1.28%へ急上昇)や、
ECB理事会を翌週に控えたポジション調整が支援材料となり、1.0720前後まで持ち直す動きとなっております。
来週(今週)の見通し
ユーロドル相場は5/13に記録した約5年4ヵ月ぶり安値1.0350(2017年1月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、
今週前半にかけて、4/25以来、約1ヵ月ぶり高値となる1.0788まで上昇しました。
この間、主要レジスタンスポイント(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線など)を軒並み上抜けした他、
強い売りシグナルを示唆する三役逆転も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象付けるチャート形状となりつつあります。
但し、上方より一目均衡表の分厚い雲が垂れ下がってくるため、ここからの上昇は容易では無いと考えられます。
週足など上位足ベースで強い売りシグナルが継続していることなども続伸を阻むと見られ、来週は一巡後の反落リスクに注意が必要と考えられます。
ファンダメンタルズ的に見ても、以下のユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、ユーロドル相場の反落をメインシナリオとして予想いたします。
- ロシアを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシア・ウクライナ問題に加えて、ロシア・北欧2カ国問題へと飛び火するリスク)
- 欧州経済の先行き不透明感(インフレ加速と景気後退が同時進行するスタグフレーションの発生懸念)
- 上記を背景としたECBによる積極金融引き締めの難しさ(ECB当局者による相次ぐタカ派発言を受けて、欧州債利回りは上昇基調を強めているが、欧州経済を巡る先行き不透明感が根強いことなどを考慮すれば、
- 米国のような50bp単位のアグレッシブな連続利上げは容易ではない→ECBの金融引き締めを材料としたユーロ買いは長期化しないと整理)
- 米FRBによるタカ派傾斜観測(今週は米当局者によるタカ派的な発言が相次いだ他、ウォーラーFRB理事やブレイナードFRB副議長からは9月以降の利上げ継続の可能性を示唆する発言もあり)
尚、来週は6/9に予定されているECB理事会に注目が集まります。
今会合では資産購入プログラムの終了決定と、次回7月会合での政策金利引き上げの地均しが行われると予想されており、市場参加者の関心は後者に移っております(次回会合での利上げ幅が25bpなのか50bpなのか)
声明文やラガルドECB総裁記者会見で50bpの利上げ可能性が強調されない場合は、ECBによる大幅利上げ観測後退→欧州債利回り急低下→欧米名目金利差拡大の経路で、
ユーロドルに強い下押し圧力が加わる恐れがあるため、来週はダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。
今週のFX用語
米国消費者物価指数/CPI
米国国内の物価の上昇・下降などの変動を表す経済指数で、「CPI(Consumer Price Index)」とも呼ばれ、米労働省が毎月中旬に公表しています。
衣料や食料品など約200項目の品目の価格の変化を調査して指数化したもので、米国国民の生活水準を示す指標のひとつです。
消費者が購入するモノやサービスなどの物価の動きを把握するための指標で、インフレ率を分析するための最重要指標として、市場関係者からも注目されています。
なお、消費者物価指数の中から、変動の激しいエネルギー関連数値や食料品目を取り除いたものを「消費者物価指数コア」といいます。
一般的に、生産者物価指数(PPI)が売り手側の価格を表すのに対し、消費者物価指数(CPI)は買い手側の価格を表します。